私たちは塩とともに歩んできた?
|還元性質の海が生命を誕生させた|
地球にまだ酸素が存在しなかった約38億年前、海は酸化性質の現在と違い、還元性質の海でした。
その還元性質の深海で生まれたのが私たちのルーツとなる生命細胞です。
ほどなくして、シアノバクテリアという二酸化酸素を取り込んで酸素を排出する光合成生物がでてきたことによって、地球は酸素を加えた空気に覆われるようになりました。
酸素の発生によって多くの生命細胞は絶滅しましたが、一部は生き残り、やがて大敵だった酸素を自らのエネルギーに利用する術を身につけることで大きく進化し、今日の私たち地球上の生物へとつながっていったのでした。
このように生命誕生の起源は、還元の海だったといいます。そして実はこの還元の海に構成成分が類似しているのが、私たちが誕生するまで10月10日の約280日間を過ごす母親の胎内の「羊水」です。
この約280日間は、生命誕生から私たち人間にいたるまでの進化をたどる時間ともいわれています。還元の海=羊水だからこそ、新しい生命が誕生し、細胞に力を与え、元気に育まれていくのかもしれません。
そして私たち人間に限らず、地上のすべての生物は海で生まれ、陸上に上がってきました。私たちの祖先は、体の中に「血液」という、母なる水「海」をめぐらすことで上陸できたのです。
羊水と同じく、血液の赤血球を除いた血漿(けっしょう)もまた、海の成分と極めて類似しています。「血潮(ちしお)」という言葉も、昔の人たちは血液と海の関係性を敏感に感じ取ってできた言葉のように想像できます。
塩は海から得られますが、私たちの体に流れる血液や生命誕生の起源と海との関係は密接なのです。それが海を凝縮しているともいえる塩が、私たちの生命活動や健康に決して欠かせないものである根拠ともいえるのです。
|文明の陰には製塩技術があった?|
世界の歴史には、エジプト文明をはじめ、メソポタミア文明、インダス文明、黄河文明など多くの文明が起こり、発展していたことが確認されていますが、文明が大きく盛隆していく陰には、製塩技術が必ずあったようです。このことからも人間が生きていくには、塩は絶対不可欠であったことがうかがえます。
現代の暮らしの中では、すっかり食塩は容易に手に入るようになりましたが、昔は食塩といえばとても貴重なものでした。
古代ローマでは、軍隊では給与の代わりに塩が与えられていたといいます。
「塩」を意味する英語のソルト(salt)は、ラテン語のサル(sal)からきたもので、塩をかけて食べるととても美味しいということから、サラダ(salad)という言葉が生まれたのは有名な話です。
同じくサル(sal)が語源となってサラリー(salary)、まさに塩が賃金として支払われていたことから生じた語句です。
かつては塩は、賃金として支払われるほど価値のある欠かせないものだったことが窺い知れます。
|敵に塩をおくる|
「塩あるところに飢えなし」といいますが、時は戦国時代の武田信玄が治める甲斐の国の領地には海がなく、塩が手に入らなくなり、領民の死活問題となって大変窮していたことがありました。
信濃の国の上杉謙信は、しのぎを削るライバルであり政敵でもある武田信玄の甲斐の国に塩をおくり、「敵に塩をおくる」という美談となって、今に伝わっていることは広く知られているところです。
|日本のしきたりや風習に密接だった塩|
古くから日本では、塩はけがれを祓う海水の化身と考えられ、神への捧げものでした。
神棚に米と水と一緒に塩を供える風習は、それを示しています。
葬儀から帰った時の清めの塩や、相撲の取り組みで土俵に撒く塩も、風習の名残りです。
食生活でも塩は調味料の中心格で、味付けをはじめ、漬け物などの食品保存(腐敗防止)、発酵の調整、傷口の消毒など幅広く利用されてきました。
私たちに密接で必要不可欠な塩には、多くの優れた力があることを先人たちは知っていたのです。
欧米人が動物性食品を多くとっているのに対して、私たち日本人は植物性食品を多くとってきました。
肉には塩のナトリウムが多く含まれていますが、昔から肉は多くとらず、野菜が多い日本人は塩をとらないと活力が湧いてきません。
四方を海に囲まれた島国に住む日本人は、昔からとっていた海の塩が体に合う塩です。
減塩志向が目立つようですが、もし心身の不調があるならば、試しに体に合う塩から見直してみてはいかがでしょう?
どんな塩でも良いというわけではないだけに、飽食といわれるこの時代、体の元気の元になる塩を選んで使うことは、とても重要なことかもしれません。
|人の体は食塩を保持する方向に働いている|
食事の時、肉や魚など塩気が強く、ナトリウムが多い物をとると、今度は逆に野菜や果物などカリウムの多い物を体はもとめます。
体はナトリウムとカリウムのバランスをとろうとしているからです。
古来からカリウムを多く含むものは主に野菜などの植物になるので、難なく採取することができます。
対してナトリウムは、動きまわる動物が主になりますから、野菜ほど確保が容易ではありませんでした。
この歴史から体の仕組みは、いつでも比較的容易に採取できるカリウムは、体外に排出し、逆に獲得に難しいナトリウムは、体内にいかに保持するか、ナトリウムの損失をいかに防ぐかの方向に働くようにできているのです。
このことからも私たちの体の仕組みが、いかに塩が不足してはならない、必要不可欠なものであるかを示しているといえます。
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